蓮沼執太 | Shuta Hasunuma

3/11 2021

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2021.03.11

10年前の東京も晴天だった。東日本大震災から10年。今年の朝はすっかり止めてしまっていた原稿を書いて、オンライン・ミーティングをしていたら、あっという間にお昼になった。

銀座へ向かう。SNSで募った鐘の音は今日のために集めていました。銀座和光のコミッションで、14時46分から黙祷の鐘の後に、新たな鐘を鳴らす、というために鐘の音が必要でした。10年前に震災と原発事故が起こった時に僕はすぐに行動を起こすことができなかった。直接的な行為をアーティストとして生むことができなかった。という思いがありました。

ちなみに、僕は芸術家だから国難な時に何かアクションをすべき、とはまったく思っていません。例えば、コロナ禍だからと言って、特別何かを作ったり、アクションをしなければいけない、なんて思っていません。やりたければやれば良い、というスタンスです。

震災以降の活動をここで言語化して羅列しないけど、自分の活動スタイルや作品への問題意識が変わったのは間違いありません。でも、直接何かをする、という根源的な行為が出来なかったことに、心に中でモヤモヤしていたものがありました。今回、この10年が経ち、銀座の鐘の音に携わらせていただき、少しだけ東北の皆さんに、哀悼の意、そして今も被災状況が続く中で生きている方々へ思いを送ることができました。

鐘の旋律を自分の中から産み出すのではなく、地震も原発事故も(コロナだって)同じひとつの地球で起きていること、だと認識しています。生きていればその分だけ、みんなに世界が存在するわけだけど、これらが起こっている場所はこのひとつの地球です。言葉にすると照れ臭いですが、今はそれぞれがひとつになる認識が大切だと思っています。コロナの状況でさらに強く感じたことのひとつです。

そういったことを具現化するために、世界中の鐘を集めて、それらをひとつの旋律にする、というコンセプトのもと、新しい鐘の旋律を作曲しました。本当だったら、福島をはじめとして東北の鐘の音をレコーディングしに行きたかったですが、緊急事態宣言が延長となり、それもかなわなくなり、友人にお願いして福島の鐘の音をレコーディングしてもらたりしました。

実際に和光へ行き、追悼をしてきた。鐘の目の前だったので、音を聴くというよりも「状況に響いている音が皮膚に触れてくる」という感触だった。作者が言うのも違うかなとは思うけども、旋律よりも鉄の音が街に響き渡り、その音に頼って人々が祈りを捧げる、想いをはせる、それが出来ることが一番大切なのだと感じる。

その後、テレビと新聞の取材を受ける。今日は暖かい日でもあり、東京の人出がとても多く感じた。少なくても銀座は密な場所がいくつもあった。その後、渋谷に移動してオーチャード・ホール公演のミーティングへ。オンラインをつなぎつつ、リアルに会っての会合。結構な大胆アイデアがあるので、こちらも少しずつ話し合いながら進めている。こうやって仲間と直に会ったり、オンラインで繋がって、公演に向かって試行錯誤をして作り上げていくことが出来る喜びを感じながら、今年の3月11日はすぎていった。

https://asm.asahi.com/article/14276386

3/10 2021

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2021.03.10

午前中は、夜ドラの全曲のステムデータ(すべての音をそれぞれの音)の書出しを行う。いくつか気になってしまった部分があり、少し手直しもした。午前中で全て終わらして、午後は外出をした。連続していた制作がいよいよ終わった。一ヶ月とちょっと籠もってなんとか完成した。一安心。明日からまた違う動きが始まる。

畠山直哉さんのインタビュー
https://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2021/03/311_earthquake_naoya_hatakeyama.html

畠山さんはアルバム『windandwindows』でアートワークを使わせていただいたり、資生堂ギャラリーでもお会いしたり、自分のイベント『MUSIC TODAY』にも参加していただいた尊敬する写真家です。明日で3/11から10年が経つ。

3/9 2021

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2021.03.09

よるドラで使用するダンスミュージックを制作。怪しいトラック、というオファーもあり、民族楽器を使って欲しい、とのことだった。ゴンちゃんことゴンドウトモヒコさんにディジュリドゥを吹いてもらい、ユザーンにリズム系のタブラを演奏してもらって、僕はカリンバを数年ぶりに演奏したりした。午後はフィルのオーチャードホールのリハーサルのスタジオ探しを。毎回色々と考えているが、今回は新しいところでリハーサルすることにしてみた。夜は小田原市が運営するイベントの音楽作りをする。

3/8 2021

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2021.03.08

浜離宮庭園に下見へ行く。一年ぶりくらいの浜離宮。オリンピックに目指して、色々と改装していたけど、それらも終わってさっぱりとした印象だった。緊急事態宣言中なので閉園していたが、特別に見学させていただけた。今日は小雨で、そんな庭園も雰囲気が良かった。湿り気の多い庭が好き。
大友良英さんがナビゲートする『RADIO SAKAMOTO』を聴きながら移動を。坂本龍一さんの代打で大友さん。耳にも優しいお話のトーンだった。自分が出演したパートは聴かなかったけど(オーディションの音源は何回もしっかり聴かせて頂きました)、大友さんと黒沢さん、柳美里さんの対談はとても面白かった。柳美里さんの作品、書庫から取り出して読み直したい。ダイアローグは個人の本質がそのまま出ていく、経験と瞬発。興味深い。

3/7 2021

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2021.03.07

昼からNHKへ。先日、蓮沼執太フィルでNHKレコーディングした分のトラックダウンをエンジニアの方と一緒に行う。NHKでの初めてのトラックダウンで色々と収穫はあった。そのあと、デザイナー金田遼平くんとオーチャードホール公演のメインビジュアルのミーティング。しっかり意見交換をして、ビジュアルを作り上げていくことは非常に刺激的で、毎回楽しみである。

3/6 2021

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2021.03.06

いよいよ、抱えているプロジェクトの同時進行が本格的になってしまい、まとまった時間を作って作業出来る日も少なくなってきた。よるドラの音楽もそろそろ仕上げ、きめ細かい部分の修正がほとんど。

午前中にミーティングひとつ。意見を聞くことは大変だけど、相手が考えていることや思っていることに耳を傾けることが一番大切。意見のその先の思いを考えたい、とかオンライン・ミーティングで思った。とても良い会話が出来た。

その後、黙々と18曲ほどの手直しをしていた。いくつかの予定をキャンセルさせてもらって、ずっと制作に打ち込んでいた。この制作が終えたら、映画見て、本読みたい。止めている原稿を書き上げたい。滞っている伝達をスムーズにしたい。などなど、気分転換の散歩で考えたりした。昼間の散歩では、やはり人出が多い土曜日な気がした。

3/5 2021

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2021.03.05

朝から作曲作業をしていた。最近は午前中と夕方が捗っている感じがする。ユザーンから音がいくつか届いて、それらも取り込んで作曲。夜にミーティングをひとつ行う。気軽に喜べるオファーでもなかったが、すぐに答えを出すわけではなく、その分だけ悩んで、考えていく、自分にとっても大いにチャレンジになる機会にしたい。しかし、制作続きの毎日なだけに、勉強不足感が否めない。

3/4 2021

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2021.03.04

バスが好きです。世界中、どこを行っても必ずバスには乗っている気がする。電車ももちろん好きだけど、ある空間に押し込められて移動している感覚があり強制力がある。なので、電車とバス、どちらかというとバスが好き。公共手段を使っての移動は現代ではスタンダードにしたい。そういうわけで午前中に葛西さんのスタジオへ行くのにもバスを利用した。バスの中では意外といろいろなことを考える。僕は「言葉」だったり、「人間の行動」をよく考えている。他者が集まって移動していく空間は僕にとっては非日常でもあり、思いもよらないことが多く感じる。それはポジティヴなこともあれば、イライラしちゃうな、ということもあるけども、興味深いことが多い。今日の移動中は、書いていた「歌詞/詩」をずっと比較しながら、言葉の奥にあるものを作っていた。ナチュールワインを買って、夜はゆっくり過ごす。東京に戻ってから、ナチュールワインを飲むことがとても減ったなぁ、と感じた。行動に制限ができてしまうコロナの影響もあるとは思うけども。

3/3 2021

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2021.03.03

毎日作業。今日も集中して録音作業を。朝から楽曲というよりも、シンセサイザーとプログラミングで音を生成したものをコンポジションするサウンドのアプローチ重要曲に時間をかけていた。わずか20秒なのに6時間ほどかかった。そのあとは、まだ作曲されていない音楽に対して作詞をする、という寄稿の原稿を整理していた。とても面白いプロセスなので、整理するのに時間が結構かかってしまった。その夜も詩の修正を行ったりして、何度も自分が書いた文字と睨めっこをして、引いたり、足したり、引いたりした。作詞はコンポジション、作曲だと感じる。音楽の領域もどんどん拡大している。直に感じることだ。

3/2 2021

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2021.03.02

前日のレコーディングもあって、午前中はゆっくりと過ごす。午後は制作再開。今日もドラマ楽曲の作業を。作り直しの曲、そして新たに作ることになった曲を作っていく。雨が降っていたこともあったが、結構捗ってしまった。集中力が途切れず、よくここまで出来てきたなぁ、と思ってきた。毎日、いろいろな環境でドラマの音楽を確認聴きをしているけど、どこでも良い感じで音楽が生きていて嬉しく思う。