蓮沼執太 | Shuta Hasunuma

1/11 2021

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2021.01.11

数日前にユザーンと長電話してて、2人でずっと作り続けていた音源が結構たまっているね、という話になった。確かにたまっている。昨年末も京都仁和寺で音源を聴くことが出来るプロジェクトに参加したり、今年も2人で先輩ミュージシャンの楽曲をアレンジしたりした(まもなく発表になる)。新曲の中には去年の僕のインスタグラム・ライブとスパイラルホールで行った配信ライブ『スパイラル・セッション』でも演奏した新曲も含まれていたり。昨晩この音源たちを落とし直していて、今朝ユザーンに送った。そろそろ全部まとめて発表が出来そうなクオリティではある。今年、これらの音楽が羽ばたければ良いな。

今日は成人の日。成人のみなさん、おめでとうございます。昼間に散歩していたら振袖を着ている方々も見かける。まだまだ一月の空気。お昼以降は気圧の変化であまり調子がでず。

終日、引き籠ってずっと制作をしていた。今手がけているプロジェクトは4曲を作る予定で、昨日とは違う曲のラフスケッチを作っていた。今回は、最初に楽譜などには起こさずに、まずは機材を触りながら形を作っていこう!というのが、音源作りのテーマでもある。普段は機材から作る、ということはしないのだけど、なるべくコンセプチャルな手法は取らずに、機材をファーストタッチにして手探りで音を作っていくプロセスを楽しんでいる。

今日の機材は「MPC2000XL」。初めて買ったサンプラー・シーケンサー。とは言っても、サンプラーはMPCとElektron Analog Rytm MK2の2つをずっと使い続けてて、パッドの叩き具合がいつまでも好きな理由。エレクトロンも音の柔らかさはMPCと近い気がする(S/N は全然違うけど)。なかなか面白い曲にはなっていると思う。

夜は、先日のシューティング写真が写真家からメールで届いて確認しつつ、お正月のお餅の鏡開きを。

1/10 2021

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2021.01.10

今日は朝8時に起床する。午前中から作業をはじめる。冬は朝の光が貴重な気持ちがする。寝ている間の深夜にやりとりが行われていた新しい映画にあてる音に関して意見交換があって、その中で送ってもらった動画などを観た後に監督と写真家に意見を伝える。筋が通っていて、非常に刺激的。その映画の音整理などをまず行った。

その後に今年発表する都内の宿泊施設のための音楽(数曲)のラフスケッチを作る。今日はモジュラーシンセのパッチングをして、頭の中にあるイメージをシンセを通して音にしていく作業。モジュラーから音楽を作っていくのは数年ぶり。パッチングしなおしたおかげもあって、新鮮な気持ちで取り組めて、新しい雰囲気をまとっていて安心した。

昼は、Lawrence Weiner の Jewish Museum の新しいインタビュー映像と
https://youtu.be/kQhftZOKZa4

空間現代のスペース『外』が配信していた 角田俊也さんと柳沢英輔さんのトークを観る
https://www.youtube.com/watch?v=q1vo7k1rRYg

夕方まで作業を続けて、外に出る。古着のポップアップがやっていて、カモフラージュのシャツジャケットを購入。夜は山本達久さん、Holger Czukay、DAF などを聴いてすごす。

1/9 2021

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2021.01.09

Roland Kayn(ローランド・カイン)の没後10年ということで、未発表アルバムがリリースされている。今年に入って時間があればずっとかけていて、これが本当にいい。Bandcampでは自分で値段を決めれるので、ドネーションをしていきたい。今日は小さい音で聴いていた。

Matego I – II by Roland Kayn

https://rolandkayn.bandcamp.com/album/matego-i-ii

今朝は工藤さんとミーティング(https://www.welcometodo.com/)。楽しかった。オンラインでは無くて事務所に伺わせてもらって、会話を。最近、ミーティングは全部オンラインということもあり、会って話すことも無駄があってとても良い。うまくいくと良いなぁ。

そのミーティングだけじゃ無くて、天気が良かったこともあり、余計に歩いて事務所に伺ったりした。そういう出来事で1日のリズムは大きく変わっていく。用事を済ませてからは、ずっと作業をしていた日。小さい機材も届いて、それのセッティングなど。

緊急事態宣言が出された影響が見えはじめる。お店などの時間短縮営業や友人のコンサートも中止や延期に。友人だけではなく、自分も4月にオーチャードホール公演が待っている。スタッフたちとも連携をとりながら、準備を進めてる。不安は多いけど、丁寧に一歩ずつ。

1/8 2021

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2021.01.08

昨日のシューティングでレコーディングした音を確認しながら聴いていた。6組が参加しており、その中からダンサーのアオイヤマダさんのパフォーマンスをレコーディングしていたのだけど、衣装についていた物が身体の動きによって、どんどんと剥がれていって、最終的にはその剥がれている音に合わさっていくようにパフォーマンスが繰り広げられていった。即興的なものだったけど、ある意味で衣装とセッションをしているような時空間になっていた。録った音の素材だけでそれが今も自分に伝わっている。不思議な感覚。

西洋のクラシックバレエは、歌のない音楽に合わせて踊る。ニューヨーク・シティバレエ団の芸術監督ピーター・マーティンスは、ダンサーの「身体は楽器」という。ダンサーは、音楽を唯一の案内図(map)として、「リズムを見て(watch the rhythm)」踊る。ダンサーは、奏者によって楽譜から引き出された「生きたリズム」を唯一の案内図とし、それに導かれて身体表現をするのである。(リズムからの逃走 著:寺前典子)

1/7 2021

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2021.01.07

今日は映画音楽のために収録に立ち会うために朝早く起きた。起きたら、とんでもないニュースが飛び込んでいた。アメリカDCにある議事堂にトランプ支持者が侵入してた。侵入した人々が銃撃され死者も出ている。連邦議会での大統領選の審議中断された。議事堂に攻めていく光景は、民主主義へ攻撃しているようにしか見えなかった。前例のない光景を見てしまった。世界が混沌としている。遠くからニュースを見守ることしかできない。全くもって他人事ではない。想像を超える分断があると感じてしまうし、日常あるシステムがいかに不安定になっているかを実感する。

そんなニュースを見ながらも、writtenafterwards の山縣良和さんの「ここのがっこう」の生徒たちが手がける作品のシューティングに参加していた。モデルは身体にハンディキャップを持った方々。生徒さんとモデルさんが2ヶ月ほど意見交換や制作を協働した作品の成果発表を撮影するもの。本当だったら、ファッションショーという形式での作品発表を予定していたが、COVID-19の影響でシューティングを発表としている。その模様をドキュメンテーションをとっており、写真と映像、それと音楽の協働で映画を作っている。その素材録音&現場録音ということで参加している。1日で6組もの作品をシューティングしているので、この現場も混沌としていた。山縣良和さんのディレクションも横で見させていただきながら。色々と面白い。録音はバッチリと満足いくものが出来ている。一緒にいてくれた河合宏樹くんに感謝。ありがとう。

初めてPCR検査を受けた。結果は陰性。

1/6 2021

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2021.01.06

今日は灰野敬二さんと電話をした。新年のご挨拶と2021年の活動の話を。去年もコロナ禍の前には、スタジオに入ってセッションを数回行っていたりして、常に「何かやろう!」と話している。年の瀬も高円寺での灰野さんのライブを観にいってきた。その日は灰野さんと電話をしていて「今夜、蓮沼くん、何してる?ライブ来い!」というお誘い言葉を受けて行ってきた。

灰野さんは正直に物事をハッキリ仰るので、話していて気持ちが良い。自分もスポンジになったように灰野さんの言葉を吸収しつつも、遠慮せずに自分の意見を言うようにしている。それにしっかりと応えてくれるのが灰野さん。人や身の回りの環境や物に対してでさえ、しっかりしたコミュニケーションが取ることが難しくなっている今、日常の当たり前を丁寧に出来ることは、とても豊かだと思う。

今年は灰野さんと一緒にパフォーマンスしたい。

1/5 2021

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2021.01.05

高塚謙太郎さんの詩集『量』を去年はよく目を通していた。「読む」というよりも「目を通す」という表現が一番しっくりくる。A4版で250ページほどあるので、読み進める、ということも出来るんだけれど、詩によって文字のレイアウトが異なり、詩を読んでいくプロセスが異なっていく。その分、人によって詩を読んでいく解釈が全く異なるかもしれない。そんな詩集である。僕はその中でも「Blue Hour」が好き。途中に「4分33秒」というフレーズが出てきてから、詩の時間軸が変容していく。また註釈なのかな?と思っていた註釈が主体性を持ち出して散文になっていき抽象化される。ん?どちらが「詩」なのか?わからなくなる。読者は2つのテキストを同時に読むことは出来ない。だから、どちらかのテキストは放置されていく。そんなふうにして、あっち行ったり、こっち行ったりすること、そういう読書体験は「読む」というよりも、「目を通す」という方が僕としては好きである。とても素晴らしい詩集で、リビングに置いてはすぐに手に取れる位置に置いていたもの。ボリュームたっぷりで。

https://note.com/shichigatsudo/n/n914280730104

1/4 2021

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2021.01.04

RIP MF DOOM. メタルフェイスをかぶったラッパー MF DOOM が2020年12月31日に亡くなった。Madlib とのユニット Madvillain が有名で、自分の思い出としては、KMD が高校生の時に特に好きで「What a Nigga Know?」とかリピートで聴いていた。プレイリスト連載をしている新しいコンセプトを「メッセージ」にする予定だったので、この KMD の曲を入れようと思っていた。年末にも聴き直していたばかりだった。安らかに。

毎年、お正月休みというものが無くて、1/1は何となくダラダラと過ごすものの、2日からはわりと日常生活に戻っている。今年は1月からドキュメンタリー映画の音楽と新しいドラマ劇伴の音楽制作に入るので、機材関係の整理をしたりとセッティング替えをしたりしていた。とは言っても、僕は音楽制作の機材はあまり持たなくて限られた機材を徹底的に使い続けていくタイプなので、アイデアが浮かんだ時にすぐに形にできるようなセッティングが一番にしたい。なので、音楽になる最初の一歩(一音目)がとても大切で、その最初の一歩がどんな機材を通すかによって、音のキャラクターが当然変わってくる。その変化が今のムードとして音に現れれるのかもしれない。

そして、新しいセッティングも完了して、今日も午前中から作曲をしていた。今日は昨年から続けている新しい音楽のアレンジをずっとやっている。これは終わりがなさそうな作業だけど、少しずつ作り上げていっているので、変化の過程が新鮮で聴いていて楽しい。それにしても、これらはいつになったら完成するんだろう。完成しない感じも楽しんでいる。

1/3 2021

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2021.01.03

去年末に鼎談があって、生態音響学者のバーニー・クラウスのニッチ仮説が話題にあがった。いわゆる音による自然学とも言うべき話で、The Great Animal Orchestra という本がとてもユニークだったことを思い出した。ユクスキュルの「生物から見た世界」のように生態系の表現を音でリサーチしていくもの。共生物による自然の音(ジオフォニー)、 人間以外の野生生物が発する音(バイオフォニー)、人間が出している音(アンソロフォニー)が3つの基本音源としている。鼎談の後、書庫からこの本を探すのが困難で再度購入して読み直している。

年の瀬に坂本龍一さんからラジオ番組に誘っていただき収録をしてきた(今夜24時オンエア)。デモテープのオーディション・コーナーをご一緒したときに、日常の音の再発見が新しい音の視点を作る、というような話が坂本さんからあった。クラウスがあげた3つの音の概念が溶け合うような音や音楽が多かったことが印象的だった。アンソロフォニー的な文化の音がどうやって自然の音に溶け合っていくことができるのか。まだまだ考える必要があるし、自分はひたすら実践しかない。

1/2 2021

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2021.01.02

ついにブレグジットした英国のアーティスト・Haroon Mirza 新作パフォーマンスビデオを観た。ローカルなコミュニティの在り方と「呼吸」についての考察に近い作品。テクノロジー的な新しさは無いけれど、明快なコンセプトでストレートに伝わってくる。色々な作家がSNSやYouTubeなどのメディアで一画面上での複数ビジョンを詰め込む方法の映像作品があるけれど、流石のクオリティだなと思う。

誰もが不安であって、この時期に作品を残していく機会を大切にして、自分が置かれている社会について考えて、形にしていく姿勢は改めて大切。昨年から僕自身も居てもたっても居られない状況が続いて、色々とできる範囲で動きながら現在の状況を反映していくような作品を作っている。日々続く不安と隣り合わせになりながら、自分の奥から出てくるものをコツコツと形にしていく作業の連続。